剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
 ジェイドから任務に戻っていいとお達しが出たのはルディガーが怪我をして二ヶ月近く経ってからだった。この時間が、ルディガーは非常に長く感じられた。

 というのもセシリアと想いを通わせ合ったあの日。お互いになんの気兼ねもなく口づけを交わし、触れ合ってもいい……はずだった。

 軽く交わしていただけのキスが自然と深いものになり、ルディガーのペースでセシリアを翻弄していく。緊張しながらも応えようとする彼女がいじらしく、じわじわと自分の中の欲深さが増していく。

 ところが、不意に口づけを中断させたのはセシリアの方だった。

『と、とりあえず、今は休んでください。怪我人だって自覚あります?』

 肩で息をしながら真面目に提案するセシリアに、ルディガーは至近距離でさらりと返す。

『それよりもシリーが俺のものになったって実感したいんだけど』

『十分じゃないですか?』

『まだ全然足りない』

 あっさり一蹴すると、ルディガーは再び彼女を抱きしめ、団服から覗く白い首筋に顔を埋める。

『ちょっ』

 抵抗しようにも、慣れない感触にセシリアの背筋が震えた。ルディガーの焦げ茶色の髪が頬をかすめ、唇と舌で丁寧に肌を刺激される。

 勝手に鳥肌が立ち、視界が滲みそうになった。ルディガーはセシリアに触れるのをやめようとしない。

『こういうとき同じ団服だと有り難いね。脱がしやすい』

 からかいを含んだ発言にセシリアは反射的に叫んだ。

『っ、駄目です!』

 さすがにルディガーは動きを止め、顔を上げてセシリアと視線を合わせる。

『六年も我慢してたんだけど?』

『こっちはそれ以上です!』

 セシリアの思わぬ切り返しにルディガーは目を見張る。セシリアは乱れた襟元を正しつつルディガーに告げた。
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