剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
「……私は、この命もこの体もあなたに捧げるって」

 セシリアの誓いを聞いたルディガーは切なげに顔を歪めてから彼女に口づけた。長く唇を重ねた後で、ルディガーは至近距離で呟く。

「きっと後悔する」

「あなたが?」

 わざと笑ってみせたのに、ルディガーの表情は変わらない。

 セシリアの心臓は今にも破裂しそうな勢いだが、それを悟られぬよう必死だった。張り詰めていた虚勢が崩れる前に自分から求めるかのごとく彼に口づける。

 唇を押し付けるだけの単純なキスしかできない。

 ルディガーはセシリアの顔の輪郭に手を添えて自らも唇を重ねていく。主導権はあっさりと彼に移る。でも、それでよかった。

 徐々に深くなっていくキスの合間に、ルディガーはセシリアの胸元で留めているローブの紐に手をかけた。

 器用に紐をほどくと、するりと床にローブは滑り落ち、セシリアは薄い夜着一枚になった。寒いと思う暇もない。

 男性と愛し合うどころか、こんなにも激しい口づけの経験もないので、すべての意識はそちらに持っていかれる。

 苦しくて胸が詰まりそう。

 完全に脳が酸素不足だ。応え方もわからない。自然と漏れる甘ったるい声が自身のものなのだと思うと、羞恥心で逃げ出したくなる。

 とはいえ自ら言い出したのだから、なにも抵抗はできない。やめられるわけにもいかなかった。

 口づけが終わると、ルディガーはセシリアを一度強く抱きしめてからそっと彼女を抱え上げた。おとなしく体を預けていると、ベッドに仰向けに下ろされる。

 短くなったセシリアの柔らかい金色の髪がベッドに散る。肩で息をして目を見開いているセシリアにルディガーは覆いかぶさった。
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