剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
「エルザは、ずっと体調が悪いのかい?」

 話を切りだしたジェイドにドリスは静かに頷いた。

「はい。元々体は丈夫な方ではなかったんですけれど、ここ数年でさらにひどくて。“お姉ちゃん”なんて呼んでいますが、私の父の兄の娘なので従姉になるんです。でも昔から本当の姉みたいに可愛がってくれて……」

「症状は、どういったものなんですか?」

 おずおずとセシリアが口を挟んだ。少なくともセシリアの知る限り、エルザは幼い頃から今みたいに寝込んでいるというわけではなかった。

 セシリアの問いにドリスは答えない。それどころか目も合わさずにあからさまに避ける態度を示した。

「あの……」

「あなたとは話したくない」

 再度、声をかけようとしたセシリアに突っぱねた発言がドリスから飛ぶ。さすがにこれには面食らった。先ほどまで普通に接していたはずなのに、どうしたのか。

 さらにドリスは畳みかける。

「私、あなたが嫌いだから」

「……なにか気に障りましたか?」

 素直な疑問だった。さっき初対面の挨拶を交わしたばかりの相手にここまで拒絶される理由がわからない。ところがドリスは敵意の滲んだ眼差しをセシリアに向ける。

「お姉ちゃんが婚約を解消したのってあなたのせいなのよ!」

 思いがけない言葉がドリスから浴びせられ、セシリアは目を丸くする。
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