赤髪とホットミルクと。
私がホットミルクを好むようになったのはもちろん彼のせいだ。








「ほらよっ」


「っわあ、もうこれ飲めないんだってば!」








いつも彼は私が飲めない缶コーヒーを投げてきては








「ははっ、知ってる。お前はこれな」






私の為に買ってくるホットミルクと換えてくれた。
















ってまた衆太のことばっかり思い出せてしまって嫌気がさすなあホント。














「悩みでもあるんですか?」





衆太との思い出に浸っているといきなりマスターが話しかけてきたもんだから若干飛び上がりつつ顔を上げる。










「まあ、尽きないんです」

「そうですか、若いうちはたくさんあるでしょう」


「私よりもきつい思いしてる人はたくさんいるのにどうしても立ち直れなくて、ダメですね私」




傷つくことを恐れて気持ちも伝えずに終わった恋ごときを悩みといってもいいのかは分からないけれど、少なくとも今まで生きてきた中ではダントツでつらい。





これ以上マスターに話す訳にもいかず、昨晩充電し忘れて既にバッテリー切れのスマホの画面に目を落としたとき







コトン、と目の前に黄色いマグカップが置かれた。

白くモクモクとゆれる湯気を辿るように顔をあげると










「ご注文のホットミルクになります」










口元だけ少し引き上げて微笑む、赤髪の綺麗な顔をした男の人がいた。























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