クリスマスなんてなくなればいいのに。


駅前について、相変わらず眩しくて色の騒がしいイルミネーションを見上げた。

視線を落としていても、地面に光が踊るから、また泣いてしまいそうだった。

ずび、と鼻を鳴らしながら、こんなところで涙が零れてしまわないように、上を見上げただけ、だったのに。


「……なんで」


ツリートップスターの瞬きが消えた。

わたしも何度か瞬きをして、四度目か、五度目に瞼を開いたとき、星は金でも銀でもない光を纏っていた。


ピンク色。薄くて、柔らかで、あたたかい。

皮肉めいたことを言ってやろうと思ったのに、言葉が出なかった。

溢れたのは涙と、隣にいてほしかった人の名前。


「わた……」


わたる。

呼ぼうとした。呼びたくなかった、けれど、呼びたかったから。


「見ないで。麻耶さん」


大きな手が、冷え切った指先が、そっと視界を覆う。

そのままゆっくりと顔を下げさせられて、星の姿が見えなくなったところで、手は離れていった。


「ごめん、麻耶さん。ごめんなさい」


「なに……謝ってるの」


「おれ、最低なこと言った」


そうだよ、最低だよ。

わたしがわたるを責めていいわけないって思ってたのに、同意を込めて深く頷いてしまう。


「麻耶さん。おれね……」


「聞かない」


「大丈夫だよ。いつものだから」


それを聞かないって言ってる。

麻耶さん、のあとは大体『好きです』って言うじゃない。

わたし、もう他の言葉なんて思い付けないよ。


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