クリスマスなんてなくなればいいのに。
知りたくもないのに、こいつのことにはたぶん、学校中の誰よりも詳しいと思う。
好きな食べ物はかりんとう。
嫌いな食べ物は羊羹。
家族構成は両親と年の離れた兄とカメ。名前はガメ子。オス。メス疑惑。
小学校のクラスはすべて1組。中学は3、2、1のカウントダウン。
誕生日はクリスマス、の翌日。26日。
どこで、どんな顔で、どの時間帯にした話なのかもなんとなく思い出せる。
わたしから聞いたんじゃない。ぜんぶ、こいつが勝手にベラベラと話をしたこと。
知ったこっちゃない、興味もない。
何度伝えても、こいつは聞かなかった。無視されてただけなのかも。
「でも、麻耶さんがいてくれるクリスマスなら好きです」
「わたしはあんたがいても嫌いだけど」
「おれのことは嫌いじゃないならいいですよ」
その顔。にこにこ笑って、裏のない顔。腹が立つんだ。調子が狂うから。
どこまでも真っ直ぐで、冗談のつもりで言ったことを真に受けてしまうから、わたしはこいつに誤魔化しはしても嘘は吐けない。