クリスマスなんてなくなればいいのに。


「クリスマスなんてなくなればいいのに」


さっきは虚空にこぼした言葉を、目の前の人に向かって投げる。

痛くないように、傷つかないように、優しく投げた。

それなのに、ひどく悲しげな、寂しげな顔をしてしまう。


ちがうんだ。そんな顔をさせたいわけじゃない。


「……わたる」


たまらなくなって、名前を呼んだ。

他にかける言葉がなくなったときに、名前を呼んでしまうんだってことを、わたるももう気付いてるんだと思う。


「はい、麻耶さん」


逃げておいて、傷付けたくないくせに傷付けておいて。

名前を呼べばそうやって、笑って返事をしてくれることにホッとする。


「帰るよ」


言いながら、わたるの脇をすり抜けて先に駅構内へと向かう。

ツリーのてっぺんに瞬く、地上に一番近い、けれど手の届かない星には見向きもせずに。

わたるの顔も見られなかった。


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