クリスマスなんてなくなればいいのに。
◇
翌日もいつもと変わりなく、朝も休み時間も昼休みもわたるはわたしの教室にやってきた。
クラスメイト達から可愛がられて、ネクタイと上履きの色さえ揃えば違和感などないほど、ひとつ学年が上のこの教室に馴染んでいる。
わたしの席のそばに陣取っておきながら、クラスメイトの男子達と談笑している姿を頬杖をついて眺める。
最初のうちは早く付き合ってやれだとか相手にしてやれだとか、余計なお世話を面白半分に焼かれていたものだけれど、今ではそんなことを言う人もいない。
単に時間の経過で、ではなく、わたるが教室に来るようになってすぐの頃、色恋に敏感な年頃なら乗っかるのも仕方がないと思えるひやかしが後に引けないほど盛り上がってしまったことがあった。
外野はいくらでも騒げていいけれど、こちらとしてはたまったものじゃないと一言言ってやろうとしたとき、わたるが先に口を開いた。
『おれ、皆さんの前で麻耶さんに告白してませんよね』
『返事はこんなところでさせません。おれの前だけで聞きます』
相当、苛立っていたんだと思う。
そのあと、わたるはわたしの手を引いて教室を離れた。
黄色い声に背中を押されて。逃げるように。
たどり着いた空き教室で、わたるはわたしの肩に頭を置いた。
何度も深呼吸をして、ブレザーの裾に皺が残るほど強く手を握りしめて。
とん、と背中を摩ってやると、びくりと肩を震わせて、けれど何も言わずに受け入れていた。