クリスマスなんてなくなればいいのに。


暖房の効いた教室は完全に閉め切られているはずで、わたしも出るときに後ろ手だったから見てはいないけれど、ぴしゃんという音を聞いたのに、ドアが僅かに開いていた。

賑やかな声が外まで漏れ聞こえていて、無意識にわたるの声を探そうとする。


「クリスマスはどっちの家で過ごすんだよ」


「プレゼントはもう買ったんか?」


「浮かれて羽目外すんじゃねえぞ」


ちらりと中を覗くと、男子のほとんどはわたるのそばに集まっていた。

ざわざわと騒がしくて、言葉として聞き取れる単語は少ないけれど、いくつかを拾い集めていくと、話題はクリスマスのことだとわかった。


すぐに中に入るつもりだったけれど、昨日クリスマスの話をしたばかりなことを思い出して、踏み出しかけた足と伸ばしかけた手を下ろす。


「わたる、どうなんだよ」


誰かがわたるを名指しした。

話の中心にいるのはわたるだ。


助け舟を出そうにも、以前助けられたのはわたしの方だったし、何もできないや。

どう切り抜けるのか、誤魔化すのか。

嘘は言わないと信じて、わたるが話し出すのを待つ。



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