クリスマスなんてなくなればいいのに。


なぜか、胸の鼓動は大きくなっていた。

ざわついて、落ち着かない。


わたるの姿が見えるほどに身を乗り出すと誰かにバレてしまうかもしれなくて、そっと身を小さくする。


「クリスマスは麻耶さんからお誘いされてます」


ざわついていた鼓動が、音を潜める。

心臓が止まってしまった気がした。

けれど、きちんと息はできる。


「マジかよ!あいつやるなあ……」


「羽目外すなよ!沢田は進路決まってんだから」


「おまえそれ念押しすぎ。フリに聞こえるわ」


聞き間違いなんかじゃない。

さっきのは、わたるの声だった。

誰だかわからないけれど、ひとりが発した『沢田』というのは、わたしのことだ。


背筋を冷たいものが伝う。

ふらついた拍子にドアに手をぶつけてしまって、思いのほか大きな音がした。

窓越しに男子達の視線がこちらに向くのが見えて、立ち去ることもできずにドアを開けて教室に入る。


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