PRISM « Contract marriage 番外編»
4つ年上の兄の紘一は、大学を卒業し、椎堂グループの傘下の会社に、就職した…

本人の希望で、普通の社員と同じように…ということだが…

あの兄が、普通の一般社員と同じように…を、希望するのか? …と、匡は猜疑心を感じた…

父親の力で、一気に役職への階段を保証されていてもおかしくは無い…

どういう意図なのか?


いゃ、自分が知らない6年の間に、
兄も、変わったのかもしれない…と、思い直そう…とした…

どうか、普通に、マトモに…生活が送れさえすれば…と、心の中で願っていた…


雅の運転で、椎堂家の屋敷に戻って来た匡…

自分が、初めて…この屋敷に連れてこられた日を思い出す…

車から、荷物を取り出した匡…、雅と一緒に屋敷の中に入った…

「お帰り、匡…」

匡が、帰宅するのを待って…そぅ、声をかけた人物…雅の車が到着するのを待っていたかのようだ…

その声に、匡の鼓動は早まった…

恐る恐る…、その声の主の方を見る…

「紘一さん、ただいま…戻りました…」

やっと…、それだけ言えた…

目の前の兄の紘一は、いつものような無表情に近い表情で…

「待っていたよ、」

と、表面的な笑みを浮かべる…

「……っ」

やはり…、底知れぬ威圧感を感じた…それは、匡自身の勝手な思い込みかもしれないが。。

「紘一さんも、元気そうで…良かったです」

その言葉に、紘一は、先ほどと変わらぬ表情で、口元だけ笑みを浮かべる…


表面的には、当たり障りない…挨拶。。

だが…、2人にとっては、昔と何ら変わりはない…ことを意味していた…

いゃ、大人になって…主従関係が明確になった…とも言うべきか…っ。
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