PRISM « Contract marriage 番外編»
「ホントなんですね?」

そぅ…、言いながら…次第に、涙が込み上げてきた…

「なんで…、お前が泣くんだ…?」

そぅ…、言われ…匡は、自分が泣いていることに気がついた…

紘一の方に、顔を上げ…

「あなたが…、こんなこと、誰にも言えずにいたから…。
どうして、黙って…。何故、彼女と結婚を…? 1人にするのを分かってて…何故?」

その、匡の言葉に…紘一は笑いかける…

「…こんな人間でも…1人で、死ぬのは怖いらしい…。だから、誰かに傍で看取って欲しかった…」

「彼女に、そんな残酷なこと…っ」

「悠夏は、お前を愛してるんだろ? それなら、この先、死ぬ人間を見届けるだけだ…」

「…愛してますよ、ちゃんと…。気づかないんですか?」

匡の言葉に、言葉を失った紘一…

「…生きてください。それが、彼女のためです」

診断書を封に戻し…、紘一に手渡そうとした匡…

「…匡。頼みがある…。悠夏が、俺がいなくなっても生きていけるように…何があっても、悠夏の傍に…」

その名で、呼ばれるのは…10数年振りだ…

匡は、その部屋を出ようと…紘一に背を向けた…

「今夜、部屋に…」

その言葉を、背中で聴いていた…

「…行きません。」

そぅ、伝え…部屋を出た…


「吉澤さん! 紘一さんは?」

身支度を終えた悠夏が近づいてきた…華やかな花柄のワンピースを身につけている…

悠夏に、先ほどの紘一との会話を気づかれてはならない…

匡は、いつも通り…の笑顔を悠夏に向け…

「中にいます。新しい服ですね」

「ふふ。こういう華やかなの、こういうとこでしか着れませんよね?」

胸元が少し空いた…ブルーに大きな花柄…に、カーディガンを羽織っている…

悠夏は、その部屋のドアをノックし、中から返事が聞こえたのを確認してから…部屋の中に入る…


匡は、紘一が用意した自分の部屋へと向かった…

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