PRISM « Contract marriage 番外編»
4
翌日の朝…、3人での行為の本当の意味を、悠夏に告げた…

紘一は、この段階での告知を望んではいなかったが…、匡がそれに従わなかったとも言える…


その、上に…

匡との関係を認める…と、言われ…今までの不貞も水に流す…と、言われてしまえば…従うしか無かった…


だが、それ以上に…紘一の病気について、匡から聞かされた悠夏は、匡との関係を断ち、紘一と共にいることを選んだのだ…


彼女が、自分の中に芽生えた…愛情に気づいた…のだった…


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「なに、これ?」

「あ、沖縄土産…」

BARのカウンターで、袋を手渡した紘一…

その紙袋の中を覗いた彩乃は、中を見た瞬間…

「いらない! 夫婦仲良くの旅行土産なんて~!」

と、その紙袋を紘一に突っ返した…

紘一は、苦笑いを浮かべ…

「彩乃。会うのは今日で最後…な?」

その、紘一の言葉に、彩乃は一瞬驚いたように…両目を見開いたが…、すぐ様、紘一に笑いかけ…

「そんなことだろうと思った。
そんなの、電話1つで済むのに…律儀ね…」

「……」

「変わったわね? やっぱり、私の予想通り…奥さまのこと、愛しているのね…」

「…そうだな…っ」

以前の紘一であったら…、即座に否定するはずの言葉を肯定したことに…、彩乃は微笑んでみせ…

「あー、否定しないし。嫌味なノロケ!」

彩乃は、紘一がアルコールを口にしていないことに気づき…

「紘一、なんか痩せた? 今日は飲まないし…顔色も…っ」

感の鋭い彩乃に、何か気づかれても…と、紘一はすぐ様、腰を上げ…

「今日は、飲むつもりないし。この後、待ち合わせしてて…妻が待ってるから…」

「あ、そぅ。奥さまによろしく!」

紘一は、軽く手を振っている彩乃に笑いかけ…店を後にした…

店の中は、薄暗い灯りで助かった…

と、本心から…そぅ思った…


店を出た後…、先ほどから感じていた腹部の痛みが…急速に増していった…

数歩、歩いたところで…視界が歪み、前のめりに倒れそうになる…

寸で…のところで、掴まれた腕…、紘一は引き止められた腕の主を見上げる…

「…お前…っ」

「…昨夜、電話されてたので…ここかと…」

匡は、紘一を用意していた車の後部座席に乗せた…

「街中で倒れたら…、それこそあなたのシナリオ通りにはならない…」

細心の注意を払い…、自分を気遣う匡に…紘一は青白くなった顔で苦笑いを浮かべた…
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