PRISM « Contract marriage 番外編»
「お前って、ホント…。
俺がいなくなった方がいいんじゃないのか?」

と、冷や汗を浮かべながら…そぅ強気な言葉を吐き出した…

「私は、彼女を哀しませたくないので…。
このまま…、病院に向かいますか?」

そぅ、車を発進させながら言った匡に…、紘一は、そっと両の瞼を閉じ…

「…いゃ、悠夏が待ってる…」

その瞼の裏に…、自分に笑いかけてくれる悠夏の姿があった…

「分かりました。」

後部座席にもたれ掛かり…、少しずつ…傷みも落ち着いてきていた…

「匡、何故、俺を助ける…? 放っておけば…その内、野垂れ死ぬだろうに…」

匡は、バックミラー越しに紘一をチラっと見…、すぐに視線を戻した…

バックミラーの紘一は、強気な言葉を発しているが…相変わらず青白い顔をしている…

「俺が、後悔するからです。
彼女と、約束したんです…あなたに悔いのない人生を送らせる…と。」

その言葉に、紘一は、瞼を開け…

「…馬鹿なヤツ…。
悠夏とは? どうなんだ?」

と、兄の紘一が自分の身体のことより、悠夏と自分とのことを気にしていることに、匡は半ば呆れた…


「…沖縄旅行から、なにも。彼女はあなたを選んだんですから…」

3人での行為に、2人は身体を重ねることはあるが…それだけだった…

確実に、以前のような恋人のような…関係ではない…

「俺のこと、憎んでるだろ…?」

紘一の問いかけ…に、匡は、答えようがなかった…

憎んでいる…、それをぶつけたところで、過去の自分を変えられるはずはないし、

憎んでいない…とも、言えない…

何を言ったところで、陳腐な言葉に過ぎないのだ…


それよりも、いまの自分に出来ることをやっていくしかない…


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匡が運転する車は、椎堂家の屋敷前に横付けされた…

その頃には、紘一の顔色も幾分もどり…、自分で後部座席のドアを開け、屋敷へと向かうまで…となった。

その姿を、運転席から見送りながら…。。匡は、紘一が何故、そこまで病身の身体を引きずってまで…普通の生活を望むのか…理解出来なかった…

普通なら、入院し、病気と向き合い…手術や抗癌剤治療など…医療的存命を望むはずなのに…と。。

が、病院に入院しているより、彼女の…悠夏の傍に居ることを望んだ…のであるならば、納得できてしまうことだった…
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