バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
今日も先行書類を仕訳して準備が完了した。
依頼者欄に書かれている名前を見て顔がほころぶ。

【連絡は製作課、紅林作業長へお願いします】

最近の私の癒し、紅林作業長。
電話をするとすごく丁寧で優しい声が返ってくる。
その声に、私は密かに憧れ癒されているのだ。

だけど、顔は見たことがない。
容姿どころか年齢も知らない。
その秘密めいた感じが、余計私の興味をそそる。

私は内線電話の受話器を取って、紅林さんの内線番号をプッシュする。
2コールの後、受話器から聞こえる落ち着いた少し低めの声。

「はい、紅林です。」

「おはようございます。図面管理課の早川です。先行書類のご準備ができましたので、取りに来てください。」

いつものやりとり。
テンプレートな言葉の羅列。
だけど。

「わかりました。ありがとう。」

その、“ありがとう”の言い方に、私の胸はキューンとしてしまう。
ああ、かっこいい。素敵。癒される。
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