バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
そんな状態だから、大島さんが取りに来たのも気付かずに私は机の上の書類とにらめっこしていた。

「…さん。早川さーん?」

「えっ?あっ、大島さん。」

何度目かに呼ばれてようやく返事をする始末だ。

「どうしたの?…目が赤いよ?」

「あー…そうですか?乾燥してるから充血しやすいんですよねぇ。」

泣きそうになる衝動に何度も駆られていたから、目頭がじんじんしている。
図面管理課が乾燥している場所でよかった。
違和感なく誤魔化せたと思う。

「大変だねー。ドライアイにならないように気を付けないと。」

「そうなんですよねぇ。…あの、紅林作業長ってどんな人ですか?」

本当は紅林さんに直接疑問を投げ掛けたいのだけど、怖くてそんな勇気はまだない。
でもやっぱり知りたい気持ちが勝って、私は大島さんに探りを入れる。

「え?何、突然。うーん、真面目で厳しい仕事人間かな。でもフォローとかしっかりしてくれるし、見た目無愛想だけど優しい人だよ。」

「…そうですよね、真面目で優しい人ですよね。」

「何?のろけとかいらないよ?」

「そんなんじゃないですよぉ。」

大島さんがニヤニヤしながら言ってくるので、私もついムキになってしまう。

“真面目で優しい”という評価はどう受け取ったらいいのか。
真面目で優しいから、小泉さんの言っていたことは嘘だと思えばいいのか。
それとも、真面目で優しいから、小泉さんの言っていたことが真実なのか。
結局わからないまま、むしろ余計に私を悩ます。
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