バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
唇が離れて、ようやく意識が返ってくる。

「…何で?」

漏れ出た言葉は紅林さんに聞こえたのかどうなのか。
好きな人からのキスなんて嬉しいはずなのに、何でこんなにも複雑な気持ちになるの。
私が固まったままでいるので、紅林さんはクスリと笑って言う。

「あんなに好きだ好きだと俺に主張してきたくせに、覚えてないなんてね。」

な、なんですと!
私ったらなんて大胆な!
ていうかそれすら覚えてないとか、もうどうしたらいいの。
とたんに恥ずかしくなって、熱を帯びてくる頬を両手で必死に覆う。
そんな私の頭に、紅林さんがポンっと優しく手を置いて、覗きこむようにして聞いた。

「大島が、君が泣いていたんじゃないかと言っていた。何かあった?」

あの時ごまかせたと思ったのに、大島さんったら気付いていたんだ。
それを紅林さんに報告するなんて。
もうっ本当に、大島さんも優しいんだから。
それより、そんな真剣な瞳で見つめられたら心臓が持ちません。
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