バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
児童施設からの帰り道、電車に揺られながら先程のクリスマス会のことを思い出していた。
子供たちに優しく微笑む紅林さん。
子供たちの素敵な笑顔。
思い出すだけで幸せな気持ちに包まれる。

「今日はありがとう。」

「とても素敵な体験でした。あの、もしご迷惑でなければ来年も行ってもいいですか?」

私の言葉に紅林さんは目を細めて「ありがとう」と小さく言うと、ぎゅっと手を握ってきた。
触れた手の温もりが伝わってきて、私の胸はいとも簡単にときめいてしまう。

「あのケーキ、美味しかったよ。」

「えっ食べたんですか?ドライフルーツ嫌いって。」

「確かに苦手だけどそれは若い頃の話で、今はもう食べられるようになったんだ。それに、せっかく可憐が作ってくれたのに、食べないわけがないだろう?」

「わぁ!ありがとうございます。」

「でもこれからは俺に一番に渡してほしい。大島にドヤ顔されるのは腹が立つからな。」

「ふふふ。嬉しいです。私お菓子作り得意なんですよ。他に食べたいものありますか?」

美味しいって言ってもらえるのがこんなに嬉しいなんて。
紅林さんのためなら頑張って作っちゃうんだから。
紅林さんは右手を顎にあてて少し考えたのち、

「可憐かな?」

といたずらっぽく言う。
一瞬わからなかったけど、すぐにその意味が理解できて私は体が熱くなる。
そして変な声が出た。

「ひぇっ、そうじゃなくて…。」

あわあわしている私を紅林さんは楽しそうに煽る。

「この前拒否られたからなぁ。」

「あ、あの、ごめんなさい。決して嫌とかそういうわけではないんです。その、私、そういうことは慣れてなくて。」

ああ、ここは電車内なのに何を言っているんだ。
幸い人はまばらだけど、何だかもうテンパってきてよくわからない状態になっている。
焦る私に紅林さんは笑いをこらえながら、少し引き寄せて囁くように言った。

「わかってる。無理強いはしないよ。渡したいものがあるから、俺の家、寄ってって。」

紅林さんの囁き声はまた落ち着いた声でかっこよくて、私は胸がきゅーんとなってコクコクと頷くことしかできなかった。
< 85 / 93 >

この作品をシェア

pagetop