バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
三度目の紅林さんのお家。
もう見慣れてしまった玄関だけど、“好きだ”と確認し合った今、お邪魔するのにちょっぴり緊張する。
紅林さんの家は、私の家とは比べ物にならないくらい広い。
リビングと寝室に加えてもうひとつ部屋がある。
ということは、一人暮らしで2LDKに住んでいるということになる。

「紅林さんのお家、広いですよねぇ。」

言って、はっとなる。
一人暮らしにしては贅沢な部屋数。
もしかして、この家に優香さんと住んでいたんじゃ。
急に不安が襲ってきて、胸が締め付けられる。
紅林さんと気持ちを通わせたはずなのに、どうしてこんな気持ちになるの。

動かなくなった私に、紅林さんが不審がって声をかける。

「どうした?」

「あの…ここで優香さんと暮らしていたんですか?」

至って冷静に尋ねたつもりだったけど、心なしか声が震えてしまう。
ああ、自分がこんなに嫉妬深い女だったなんて思いもよらなかった。
そんなことくらい、全然大丈夫だと思っていたのに。

「なるほど、そういうことも気になるんだ。」

紅林さんはふうと息を吐くと、困ったように私を見て、そして優しく頭を撫でてくれる。

「まさかそんなわけないだろ。引っ越したに決まってる。ただ、財産分与はしたから家電製品はそのまま使っていたり…って、何で泣くかな。」

「う~~~だって。紅林さんはこんなに優しいのに、大人げない自分が情けない~~~。」

みっともなく鼻をずびずび鳴らす私に、「困ったヤツ」とか言いながら、紅林さんは声をあげて笑った。
そんな風に笑ってくれるのも新鮮だし、私の不安もちゃんと受け止めてくれる、そんな優しい紅林さんがやっぱり好きだなぁって実感した。
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