夜のしめやかな願い
「わからないか?」
無言のままうなずくと、軽く息を吐く音がした。
「後で、アフターピルを届ける。
一緒に毎日飲むピルも。
だからといって、ほかの男とはするな。
共有する趣味はない」
なんだか意味がわからない。
「それから」
宗臣は羽織った上着の内ポケットからローテーブルに通帳とカードを落とした。
「大学の学費だ。
楽譜なんかの必要経費にも使え。
大学は卒業しろ」
さゆりは目を見開いて、落ちた衝撃でページが揺れている通帳を見つめる。