夜のしめやかな願い
さゆりはふっと息を詰めた。
もう二度と自分の前には、姿を現さないのではないかと思っていた。
「オミ」
ぽろりと名前が口からこぼれる。
宗臣はまばたきで返事をかえす。
「あ、そのブーケ、組み合わせの指示をしたのは兄さんだから」
宗忠はすかさず告げた。
「ありがとう・・・」
さゆりは手元のブーケを見つめながら、お礼をつぶやく。
宗臣は無言のまま見下ろしてから、さゆりの傍らに立っている男に視線を移した。
ひたりと二人は視線を合わせていた。
宗臣が先に視線を外して、さゆりに戻した。