夜のしめやかな願い

「久しぶりだな」

さゆりは貼りついていた舌を動かす。

「うん」

そのまましばらく見つめあっていた。

観察するような宗臣の視線。

「どう、だったかな」

さゆりは居心地悪くて聞いてみた。

奇妙な沈黙になる。

「おまえは男によって演奏が変るな」

さげずんだ口調に、さゆりは一瞬呆けた。

男ってなんだろう。

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