夜のしめやかな願い
「でも、悪くなかった」

口調が柔らなくなったのに、まじまじと宗臣の顔を見つめる。

「あり・・がとう?」

宗臣はふっと口元で笑うと背を向けて立ち去っていく。

「やれやれだなあ」

宗忠が苦笑している。

「じゃあね、さゆさゆ。
 また連絡する」

軽く手を上げて宗忠は速足で宗臣を追っていった。

「前にも髪の毛が茶色い方は来てたな?
 親戚か?」

啓の言葉にさゆりは苦笑した。

「幼馴染たち、です。
 もう一人、あの二人の間に男子がいて、3兄弟なんです。
 前に・・住んでいた家が近所で、小さいころからずっと仲がいいんです」

さゆりはさらっと答えて、楽屋に足を向ける。

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