夜のしめやかな願い
「なるほど兄ってわけか。
なら、あの傍若無人な態度は納得だな」
さゆりは足を進めたまま頷く。
「そうですね」
そうなんだ。
あの人たちは、兄たちなのだ。
手にしたブーケを見下ろす。
繊細な花の組み合わせ。
レースフラワーにニゲラ、ムギセンノウ。
発表会の花束としては地味。
でも、わかってくれているよな、と思う。
さゆりが欲しいと思う花束のこと。
ため息を一つ、ついた。
そして、それを傍らに立つ啓はじっと見降ろしていた。