夜のしめやかな願い

「えっと。
 来月の振替表の作成、を・・」

啓はちらりとパソコンの画面を見た。

「ふうん」

一歩、啓が足を進めたのに、さゆりは座っているの椅子の背に体を押し付けた。

「け・・啓先生、こんな遅くにどうしたんですか?
 忘れ物ですかね~?」

焦って、間抜けな声になる。

「忘れ物?
 いや」

えーっと。

と思っているうちに、気づけば啓は両手をさゆりの向かっているデスクにつき、囲まれた。

「あんた、こんな遅い時間に一人でなにやってんの」

ずいっと身を寄せられ、ささやかれる。

さゆりは再び、カチンコチンに固まった。

「いっ・・ひ・・ふりかえ、しより・を」
「だとしたって、襲ってくれっていうもんじゃない?」

いやいや、違うだろ。

さゆりは必死に頭を振って否定した。

すごくアルコール臭い。

「さゆり」

啓は顔を近づけると耳元で囁いた。


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