夜のしめやかな願い
「全て貸してやる」
それだけ言うと、あいさつもなしに宗臣は出て行った。
律儀に玄関ドアのカギをかける音がして、足音が遠ざかる。
つまり。
さゆりは通帳をそっと開いて0を数える。
これはお手当なのか?
貸してやるってことは、借金?
でも。
だけど。
部屋の片隅に追いやっているケース。
ふうっと煙のように幼馴染の宗忠の顔が浮かんで消えた。
えへへ、っと間抜けに笑ってみた。
これで、まだ続けられるのだ。