夜のしめやかな願い

     *

自分の中で渦巻く風の正体が、ずっとわからずにいた。

起因はわかっているのに、目を逸らし続けて、結局、自分自身が耐え切れなくなって、こうやって戻ってきた。

それとなく、さゆりの周囲を探って。

今はあの男が、さゆりに心を砕いて世話をしているのだから、自分は用無しだと解っている。

でも、もしかしたら、あの男がさゆりを傷つけるかもしれないから、注意は怠らない。

そういえば聞こえがいいが、所詮ストーカーだ。

自嘲を浮かべる。

まあとっくに犯罪者なのだから、もう一つ罪状が加わってもたいしたことない。

最初は、殺人。

次は脅迫。

売春に強請。

自分で疲れているんだなと思う。

負のことばかり考えて、自分を追い詰める時は、疲れている時だ。

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