夜のしめやかな願い
さゆりのヴァイオリンが聞きたい。
短く息を吐く。
そうだ。
明日、グループコンサートがあって、それを聞き行くため仕事を詰めているんじゃないか。
思考がまとまりなく散らばっていた。
宗臣が帰国していると知ってから、さゆりは内藤の家に自分の出るコンサートにチケットを欠かさず送ってくれてい
る。
宗忠から転送されてくるので、宗臣も欠かさず聴きに行っていた。
だけど、さゆりから送られたチケットを使ったのは一度だけ。
宗忠に引きずり出されて聞きにいった、あの時だけだった。
後は用意されたチケットを使わず、自分で改めて買い、目立たぬ席でひっそりと聞き、ひっそりと去る。