夜のしめやかな願い

あの時、一言、構わない、と言えばよかったのに。

まだ若かったな。

さゆりの才能を腐らせ、そして結局、手の届かないところにいってしまったのに。

自分がぼんやりとペンを見つめているのに、まばたきを繰り返した。

やっぱり、ひどく疲れているのだな。

頭が重い。

今夜はもう少しだけにしておこう。

宗臣はのろのろと書類をめくった。

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