夜のしめやかな願い

    *

昨晩から仕事を詰めているというのに、思うように仕事が進まず、コンサートが始まってから会場にもぐりこんだ。

座席に座ると、体が埋もれる感覚で、流れている演奏が頭に籠る。

宗臣はやっと体調がすぐれないことに気が付いた。

ふわふわと雲の中で音楽を聴いている感じ。

目を開けられなくて、ただただ音楽と拍手が交互に流れていくのを、ぼんやりと捉えていた。

やがて何曲目かの曲が耳に入った途端、宗臣はため息をついた。

光を帯びた音が、明確に宗臣の中に届いてくる。

その演奏が誰のかは明白だった。

口元が緩む。

暗闇の中、いつだってさゆりの音は光の糸だった。

か細くて、救われたいために掴めば、切れてしまいそう。

でもその放つ光は、閉ざされた人生の中で、希望だった。


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