夜のしめやかな願い
離れた今だって、それは変わらない。
掴むのをあきらめたけれど、目の前できらめいるのを眺めているだけでも、十分幸せだ。
「お客様。
お加減でも優れませんでしょうか」
耳元の声に、宗臣はおっくうながら瞼を上げた。
いつの間に会場は明るくなり、観客の姿もない。
「ああ、失礼」
演奏会が終わっていたのを理解すると、宗臣は立ち上がろうとした。
地面に飲み込まれる感覚。
そこで宗臣の意識は暗転した。