夜のしめやかな願い
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さゆりが楽屋で後片付けをすませていると、救急車のサイレンが身近で響いているのに気が付いた。
仲間の誰か倒れたのなら、手伝いがいるかと思って見に行くと、それは宗臣だった。
あれっきり来てくれていないと思っていたのに。
運ばれて行こうとするのに、さゆりは勢いよく救急隊員に、“それは私の客です!”と宣言すると、一瞬、微妙な顔を
されたが、一緒に乗せてくれた。
意識がないのに、取り返しのつかない状態だったらと、胸が苦しくなる。
オミがいなくなる?
さゆりはぎゅっと手を握りしめた。
宗臣の働き方から、重病かもしれないと恐れていたのに、あっさりとインフルエンザですね、と告げられて肩が落ちた。
決してインフルエンザを舐めているわけではないが、肩透かし感はあった。