夜のしめやかな願い

     *

さゆりが楽屋で後片付けをすませていると、救急車のサイレンが身近で響いているのに気が付いた。

仲間の誰か倒れたのなら、手伝いがいるかと思って見に行くと、それは宗臣だった。

あれっきり来てくれていないと思っていたのに。

運ばれて行こうとするのに、さゆりは勢いよく救急隊員に、“それは私の客です!”と宣言すると、一瞬、微妙な顔を
されたが、一緒に乗せてくれた。

意識がないのに、取り返しのつかない状態だったらと、胸が苦しくなる。

オミがいなくなる?

さゆりはぎゅっと手を握りしめた。

宗臣の働き方から、重病かもしれないと恐れていたのに、あっさりとインフルエンザですね、と告げられて肩が落ちた。

決してインフルエンザを舐めているわけではないが、肩透かし感はあった。

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