夜のしめやかな願い
煩わしいと思っていた全てを捨てた清々しさなんて感じない。
得たのは、ただ一つの自己満足だけだった。
自分の欲に負けたことで、世間の目にさらされそうになった彼女を守れた、という。
宗臣の頬に皮肉な笑みがかすめた。
でも結局は、内藤から逃れられない。
ひたひたと近づいてくる。
共に戦っていると思っていた兄弟が、意図なく裏切って、内藤へ取り込もうとする。
飲み込まれても、いいのだろうか?
彼女を道連れにしてもいいのだろうか。
考えても考えても答えは出ない。
ビルにたどり着いて、真っ暗な事務室を見上げる。