夜のしめやかな願い
「せ・・んせい」
啓の父親がのっそりと立っていた。
「啓。
おかしいよね?
絶対おかしいよね?」
「ええと、そう・・かもしれませんね」
にっこりと愛想笑いを浮かべる。
「さゆりちゃん、聞いてみてくれないかなあ。
あいつが、あんなんだと、食事の時も、暗くって。
耐えられないんだ・・・」
啓の母は早くに亡くなって、父子家庭だと聞いたことがある。
「いや、私では」
さゆりはずりずりと下がったが、がっちり腕を掴まれると、そのままドアの中に放り込まれた。