夜のしめやかな願い

「おい」

不遜な声にさゆりはノブを掴んだまま恐る恐る振り返る。

「あー、なんでもない」

顔をそらされて、ひらひらと手を振られた。

「ですよね。
 失礼しま~す」

さゆりはそそくさと逃げ出していく。

全く気にしやしない。

わかりきっていたが、啓は苦笑いを浮かべた。

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