夜のしめやかな願い

隣に立つ宗忠のタキシード姿を見ても、思ったよりも、というか全然、胸は痛まなかった。

それよりも、宗忠の浮かべている笑みが、にこやかなのに、鼻の下が伸びているようにしか見えなくて、肩が落ちる。

さゆりの隣の席に座っている宗臣は鼻先で笑っていた。

本当に、残念な感じ。

倫子さんにバレないといいけど。

バレて、ピンヒールの踵で刺し踏みつけられそう。

招待客にはわからないように、身内には、必要以上にベタベタと倫子にくっついているのが丸わかりの結婚式が終わる。

このフラワーシャワーは宗忠の顔に投げつけてもいいだろうか。

準備運動に指をニギニギし、肩を回していると、宗臣があきれたように息を吐いているのがわかる。

そして、自分の分もさゆりに押し付けた。

ヒラヒラと舞うから集中して慎重に狙わないと。

< 175 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop