夜のしめやかな願い

「着てみるか?」

宗忠の静かな問いかけに、手元が狂って投げた花びらはさゆりの目の前で舞い上がってしまう。

「え?」

驚いて見上げると、宗臣は視線をおろした。

さゆりの髪についた花びらを宗臣は指でつまみ取った。

「おまえも、着てみたいか?
 ・・・いつか」

さゆりは息をのんだ。

「着るっ」

そう。

自分は着てみたいのだ。


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