夜のしめやかな願い
「いやいや、貴重なアルバイトだから」
「ああ、そう?」
宗忠はやや疑問形で聞いて、いたずらっぽく笑う。
「さゆさゆの演奏もだいぶ変わったよね。
柔らかくなって、暖かくなった。
ほんと、男が変ると演奏が変るんだね~」
前に、自分の兄が言っていた言葉を、微妙に意味を変えて皮肉気に言ってみる。
「そう?
あんまり自分では気づかないんだけど」
さゆりは全く覚えていないらしく、照れるように言って小首を傾げた。
「はいはい」
宗忠は自分で振っときながら、胸焼けしそうだった。
なので、もうちょっと突いてみる。