夜のしめやかな願い

「だから、ついついさゆさゆに、八つ当たり気味に言ったんだよね」

宗忠の目がきらりと光った。

「“おまえは男によって演奏が変るな”」

宗臣の声色をまねて宗忠は言った。

さゆりはぐっと詰まる。

思い出した。

「宗忠」

イラついた声で呼びながら、宗臣が中庭に入ってきた。

肩に乗っている女の子がひしっと宗臣の頭に抱き着いている。


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