夜のしめやかな願い

何か言いたげに口を開いたが、閉じて速い足運びでずんずんと進んでいく。

「別に。
 好かれるのは一人でいい」

ぼそりとつぶやきが聞こえた。

さゆりは手を引かれているために、宗臣の後頭部と見上げる。

見えている耳が赤い。

え、この人、デレた?

天変地異だ。

さゆりは驚愕に目を見開いて見つめる。

視線に気が付いたのか、宗臣がちらりと振り返った。

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