夜のしめやかな願い

「あいつに手を出したのは・・・」

ため息混じりになってしまう。

「金を貸したら対価が必要だろ?
 あいつに対価になるものが他に何かあるか?」

宗忠の顔が不機嫌になった。

同じ顔の造作だっていうのに、宗忠はいつだって表情が豊かだ。

一体、どうやって顔の筋肉を動かしているのかいつも不思議に思う。

「いらなくない?
 おれらの妹じゃないか」
「ようなものだ」

宗雅が適切に突っ込む。

「ようなものに、何もなく金を貸したら負うものはなんだ?」

宗臣は言葉を繋いだ。

宗忠はぐっと黙り込んだ。

引け目、負い目、ご機嫌伺い。

3兄弟の周りに始終渦巻いている感情。

さゆりがその他大勢になる。

陰鬱な空気がただよった。
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