夜のしめやかな願い

だから、習い事に一緒に通ったのは、なぜか宗臣だった。

バイオリンの先生が、宗臣が習っているピアノの先生のお嬢さんだったのだ。

幼稚園生の頃は、行きは母に連れられ、帰りは宗臣と帰ってきた。

小学生に送りを頼むなんて、今を考えるとありえないが、これも母の策略だったのだろう。

宗臣のレッスンはさゆりの後で、終わるまでレッスン室の椅子に座って待っていた。

小さいながら大人しく待っていられたのは、宗臣のピアノが好きだったからだ。

今、振り返ってそう思う。

そしてレッスンが終われば手を引かれながら帰った。

そういえば、必ずキャンディーをもらった記憶がある。

今気づけば、さりげなく輸入物だった。

さゆりが小学生に上がると、二人だけで通いようになり、それは宗臣が中学3年で止めるまで続いていた。

宗臣も良く嫌がらなかったと思う。

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