夜のしめやかな願い
「どうしてやめたの?」
「なにを?」
「ピアノ」
宗臣はその話題になったのが不思議らしく、少し顔を傾けた。
「オミのピアノ、好きだったのに」
「親に付き合ってやるのに中3までで十分だろ」
宗臣は軽く答えて読んでいたタブレットに戻った。
さりげなく英語のサイトだ。
嫌味。
さゆりはじろりと睨んで、履歴書のサイトに入力を再開する。
4年生となった今、就職活動も真っ盛りだ。
大学院を受けるつもりでいたから、準備をしていなくて、完全に出遅れている。