夜のしめやかな願い
なんとか近所にある音楽教室の講師に内定したが、給与は生徒数による歩合制で、それでは暮らしていけない。
大学の知り合いが、派遣会社に派遣登録をしたというのを耳に挟み、自分もその道しかないと思っている。
休日はどこかのホテルなんかの演奏のバイトもいれないと。
さゆりがため息をつくと体重計の針が揺れた。
オミ、なんて思うかな。
でも大学院にも行かず、留学経験もなく、なんの賞も取ってない自分には、これが限度だ。
就職したら返済が始まる。
月1万でいいだろうか。
言ったら、25年ローンって住宅ローンか、とか鼻で笑われそうだ。
さゆりは苦笑いをしてから暗い気持ちを振り払い、浴室からリビングに戻るとラグに座っている宗臣ににじり寄った。