夜のしめやかな願い
「渡した通帳はそのまま預けるから、毎月そこに振り込んどけよ」
「う・・うん」
頼りない返答に宗臣は少し眉をひそませてから、それでも何も言わずに雑誌に戻った。
「もう、ここに来ることはないと思うが、練習さぼるなよ」
「え?」
さらりと言われた言葉に唖然として、宗臣の雑誌に視線を落としている横顔をみつめる。
「ど、ど、どうして?
海外赴任とか?」
どもって聞いてから、宗臣の腕をつかんだ。
宗臣の視線が雑誌からさゆりに落ちる。
数秒、間があった。