夜のしめやかな願い
*
「さゆさゆ?」
スマホから宗忠の柔らかい声が聞こえてくる。
「就職決まったんだって?」
「うん」
「・・の、割には声が暗いね」
「うん。
オミ・・がっかりしたんじゃないかな。
小さな街の音楽教室だなんて」
「こら、さゆさゆ。
失礼でしょう」
「はい」
宗忠の言うことはよくわかる。
「就職祝い、何がいい?」
宗忠は打って変わって明るい声で聴いた。
「うーん、お祝いかあ」
いらないと言いたくなるけど、でも欲しい。
そうだ、宗忠とデートしたい。
ずっと好きで。
でも幼馴染にすぎなくて、宗忠の恋人たちがうらやましかった。