夜のしめやかな願い
眼福だ。
ありたがや~と年寄りのように拝みたくなる。
正座がしびれるのに足を崩すと、その動きで壁に立てかけてある鏡に映る、自分の姿に気が付いた。
父の時は喪主が母だったが、今回はその時、母が来ていた喪服をさゆりは着ていた。
母は剣のある美人だった。
なぜ、あの父と結婚したのか不思議なほど。
さゆりは父親似だ。
少々ふくよかな体形に、ちまちました顔のパーツ。
小学生の時、子豚ってよくからかわれた。
鏡に映った姿はまさに子豚だ。
さゆりはがっくりときた。
宗臣が顔を向ける。
澄んだ眼差し。
「喉が渇いた」
「はい」
さゆりは立ち上がると、湯を火にかける。