夜のしめやかな願い

再び満員電車に乗る気がなくなり、駅を出てタクシーを拾うことに決めた。

改札に向かって歩き出す。

今度こそ宗臣はため息をついた。

本当なら、面倒を招かないために、こういう助けはしない。

だが、さゆりと関わっていると、ついほだされる。

甘いよな。

宗臣は苦く笑いながら、足を進めた。

「さすが。
エリートは仕事だけじゃないね」

聞き覚えのある嫌味の口調に宗臣は顔を向ける。

数少ない同期の一人がにやにやして見ていた。

何かと突っかかってくる奴だ。

野田・・だったか。

やっかまれているのだとわかっているし、身に覚えは余りあるほどある。

< 44 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop