夜のしめやかな願い
再び満員電車に乗る気がなくなり、駅を出てタクシーを拾うことに決めた。
改札に向かって歩き出す。
今度こそ宗臣はため息をついた。
本当なら、面倒を招かないために、こういう助けはしない。
だが、さゆりと関わっていると、ついほだされる。
甘いよな。
宗臣は苦く笑いながら、足を進めた。
「さすが。
エリートは仕事だけじゃないね」
聞き覚えのある嫌味の口調に宗臣は顔を向ける。
数少ない同期の一人がにやにやして見ていた。
何かと突っかかってくる奴だ。
野田・・だったか。
やっかまれているのだとわかっているし、身に覚えは余りあるほどある。