夜のしめやかな願い
「ええと。
先生」
教室運営者である啓の父親は、みんなと同じように先生と呼ばれることを命じていた。
「なんの話でしょうか」
態勢を立て直して、お嬢様スマイルを浮かべて見せる。
「うん、そろそろ発表会、じゃない?
先生方も演奏をするんだけど、さゆりちゃんは啓とデュエットだから」
あーりーえーなーい。
「いえいえそんな、若輩者の私が啓先生となんて。
間宮先生ではいかがでしょう?」
「う~ん、去年、間宮先生とでさあ。
啓が・・・」
ぶつぶつと呟いている。
何があったんだ。