夜のしめやかな願い
「確かに、宗雅の言うとおりだな」
宗臣が口の端で笑った。
「ソーガ?
何を言ったの?」
さゆりは宗雅(むねまさ)のことをいつもソーガと呼び捨てていた。
彼は小さいころから変わらず、いたずら好きの悪ガキだ。
碌なことを言わない。
子豚って言い始めたのも宗雅だ。
思い出すと、殴りたくなる。
「さゆり」
宗臣の呼び方は、いつも淡々とした調子で、ある意味安心感があった。
「なに?」
問いかけて気が付いた。
今日のこと、お礼を言っていない。